私たちは日常、息することでさえほとんど意識していませんが、肺は自然に呼吸し続けています。心臓も自らの意思で動かしているわけでもなく、睡眠中でも止まることなく動いています。
臓器も細胞も自己の意識にかかわらず生命体として生命活動しています。
その生命体に正直に自然な生き方をめざしたいが、貪瞋痴(むさぼり、いかり、おろかさ)の三毒の煩悩のために不自然な生き方をしているから、ストレスのために自ら苦しみ、命さえも縮めてしまう。
脳梗塞で倒れてから、手足腰が不自由になり三年半の間、病院のベッドで寝たきりの状態で生きてこられて方が先日亡くなられました。92歳の男性です。
老齢になられてもなおスポーツマンでした。強靭な心肺や臓器の機能が正常にはたらき3年半ものあいだ、命を生かしめたのです。自らの意思で身体の機能を働かされてというより、自分という生命体が自らの臓器の機能を働かせてきた、まさに人は自己を超えたところで生かされているのでしょう。
3年半もの長い闘病生活は気の毒なことだと人は思うでしょう。けれども、90歳を超えて生きた3年半は人生においてもっとも安らかに穏やかに自己本来の生命活動に生きられた時期でもあったのでしょう。
人は自分の力で生きているようで生かされている。けれども無知な人間はあたかも自分が自分の力で生きていると錯覚してしまいます。
自分の身体である生命体(自己本来の生命活動)に合点がゆけば、姿勢を正して、息整えて、貪瞋痴の三毒の煩悩による不自然な生き方を、ある程度は自制できるはずです。
(安達)
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