心優しい王子
人間だけでなく、神さまや、小鳥や犬、猫・・・また、草木といった、小さな命にまで祝福されながら生まれてきたお釈迦さまですが、かわいそうなことに、お母様のマーヤ夫人は、生まれて7日目に亡くなられてしまいます。
そこで、マーヤ婦人の妹の、マハー・パジャーパティが、後妻に入り、シッダールタ王子、つまり、お釈迦さまを育てました。
マハー・パジャーパティには、後にナンダ(難陀)という子供が生まれます。つまり、王子からすれば、異母弟になりますよね。このナンダは後に、色んな経典に登場してきますが、その話はまた後日にしましょう。
つまり、王子は、生まれながら、祝福されながらも、現実には、愛する母の顔も知らずに幼年期を過ごしたのです。それが、どれほど寂しいことなのか、皆さんにもお分かりだと思います。
王子は、その寂しさの故にか、いつも物思いにふけ、小さな命にまで優しかったと言われています。文武両道に長けた王子にはこんなエピソードもあります。
子供が矢で射止めた小鳥を、王子は矢を抜いて逃がそうとします。その子供は、王子から小鳥を奪い返そうとします。そこで王子は、弓で競争して、勝った方がハトをもらおうと、提案しました。
そして、遠くの木に実をめがけて、王子と子供は弓を射ります。子供の矢は外れ、王子の矢は木の実を射抜きます。そして、王子は小鳥を得ると、逃がしたのです。
心優しい王子、その上、武芸にも秀でている王子がよくわかるエピソードですよね。
王子の結婚
そして、王子も16歳になった時、人生の分岐点がやってきます。
人生の一大イベント、分岐点、と言えば、結婚ですよね。王子もとうとう結婚をします。
お妃の名は、ヤショーダラー。二人の間には、ラーフラ(らごら)という子供も生まれました。因みに、このらごらという名前から、お寺の子息を「らご」と呼ぶこともあります。
ところで、このラーフラ。ラーフとは、悪魔のことです。日食や月食を引き起こす悪魔です。お釈迦さまの子供の名前が悪魔の名前とは、ちょっとハテナ?な感じがしませんか?しかし、お釈迦さまも人の子。まして、母の顔も知らないお釈迦さまにとって、ラーフラはかわいくてしかたがなかったことでしょう。きっと、とても寵愛したはずです。それは、後に出家するお釈迦さまにとって、最大の敵であり、一番の束縛であり、最後の難関であったはずです。つまり、逆に言えば、それほど、ラーフラを愛していたということです。
悟った後に説かれる、四苦と八苦の中に、愛別離苦というものがあります。「愛するものと、永遠に一緒にいることはない。いつか、別れる日がやってくる」と、いうものです。まさに、お釈迦さま、シッダールタ王子はこの、愛別離苦に苦しまれたんでしょうね。
今日は、ここまで。
次回は、有名な四門出遊のお話をしましょうか。
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